いざ、テスト!!
- 2023.06.20
- ブログ
文責 講師・南
塾生の皆さん、こんにちは。高総体お疲れ様でした。
中総体お疲れ様です。
そして、いよいよ、テストが近づいてきました。
テスト範囲が示されて、中1生の皆さんは初めてのテストをむかえようとしています。
既に、下小路中学校は1年生のテストが終わり、高得点者続出ということで、とてもめでたい限りです!
さて、今日はわたくし講師・南が経験していたテストをご紹介しましょう。私はかつて、岩手県内で中学校の教員をしていました。つまり、テストを受ける生徒に授業を指導していただけではなく、実際のテスト問題をつくる側の人間でした。
中学校の先生はいったいどうやってテストをつくるのでしょう??
今日はその秘密を少しだけ伝授したいと思います。
テスト問題作題者の意図
中学校の定期テストというものは、もちろん中学校の先生が心血をとしてつくります。
小学校のテストはすべて業者(教文社や新学社)などが作りますから、ぶっちゃけ超簡単です。しかし、中学校のテストは、授業をしている先生が作成するテストですから、当然、先生のクセが出ます。これまで受けてきた先生作のテストを見ていけば、自然と対策ができてしまうとも言えます。
大前提
中学校の定期テストは、テスト範囲内から出題されます、当たり前ですね。中学校の先生は、まず、最初に、テストの難易度設定を行います。具体的には、だいたい平均点が60点前後になるようにテスト問題を作成していきます。
つまり、しっかり勉強しておけば確実に60点は取れる。言い方を変えれば、成績がいい人も悪い人も、ちゃんと勉強すればだれでも60点は取れるテストをつくることになります。
これが意外と難しい。
社会科について
社会科のテストの出題の中心は教科書とワークでしょう。実は、皆さんが持っているワークには「教師用」と言って、すべて答えが載っていて、資料データがCD―ROMに入っているものを、先生は持っています。ここからテストの作成に入っていきますから、もちろんワークからの出題は多くなります。
みんなが持っているワークから出題されるわけですから、しっかりワークをやれば高得点が取れるはずなのです。ただし、社会のテストの出題形式の基本形は以下のようになります。
①一問一答(クイズ)式
これは「○○の名称を答えなさい」といったように一つの問題について答えが一つのタイプです。これはただのクイズです。ちゃんと勉強して答えを知っていれば簡単なんですが、知らないと詰むゲームです。通知表の評価観点にある「知識・理解」の評価項目に使われます。
②選択問題
これは「ア、イ、ウ、エ」などの選択肢が用意され、そこから一つ選ぶ問題ですね。通知表の評価観点の中では「思考・判断・表現」の評価項目に用いられがちです。
ここで少し、裏の話をすると、選択問題の正解の選択肢は初めから3つ目の選択肢、「ア、イ、ウ、エ」でいえば「ウ」の選択肢になるケースが多いです。なぜなら、問題をつくる先生方は、解答者である皆さんに「正解がどれか悩んでほしい」わけです。例えば、しっかり勉強してきた人に対して「ア」を正解にしてしまうと、ほかの選択肢を読まずに「ア」と解答して次へ進んでしまいますよね?
「思考・判断・表現」の評価項目に使うためには、解答者である皆さんが「思考して(考えて)、判断して」もらわないといけません。つまり、諸君が「正解はどれかな??」と悩んだうえで選択肢を選んでほしい。そういう風に問題をつくります。
岩手県の高校入試問題の社会科は、1/3が選択問題です。選択肢「ア、イ、ウ、エ」を、正解順に数を数えると、「ウ」の確率が29パーセントくらいでした。最近では選択肢に偏りはなくなってきていますが、実際のデータとしてはこういうことです。選択問題でどうしてもわからない問題が出た場合は「ウ」を選べば正解できるかもしれませんね(笑)
③記述式問題
これはキーワードやテーマについて説明させる問題です。最近では様々な資料を読み取って記述する問題が多いです。しかし、ワークの中で出てくる記述式問題の数は限られています。テンプレートになる文章を頭に入れておけば問題なく解答できるでしょう。
さて、ここで実際に私が作った問題の一部を掲載してみましょう。
中3の内容です。せっかくですからチャレンジしてみてはいかがでしょうか??一学期の期末テストの一部です。一問一答問題と選択問題です。これを含めて、設問1―5までの小問44問各2点、論述12点の問題です。
設問3・4は実力テストや高校入試問題の改題で構成していました。最後には、論述式問題(あなたの考えを書きなさい)問題をつけていました。これも、岩手県の高校入試問題の最終問題を意識して作成していたものです。
まずは、解けるかどうかの小手調べの腕試しです。
問題の最後に模範解答と種明かしを書いておきます。
平成24年度 1学期 3年生 社会科 期末テスト
設問1
現在、社会を取り巻く様々な問題について、次の問いに答えなさい。
(1)二度の世界大戦に関する各国の結びつきに関する下の問いに答えよ
①1907年にイギリス・フランス・ロシアで成立した結びつきを何というか
②1882年にドイツ・オーストリア・イタリアが結んだ軍事同盟を何というか
③1940年に日本がドイツとイタリアとの間で結んだ軍事同盟を何というか
(2)第一次世界大戦によって欧米列強の勢力が中国から薄れたことを背景に、日本政府が中国政府に認めさせた要求を何というか
(3)民主主義や人権を否定し、軍事力で領土を広げようとする独裁政治の考え方をカタカナで答えよ
(4)ドイツのユダヤ人迫害などに抗議するなど、占領地の民衆が起こした運動をカタカナで答えよ
(5)アメリカやイギリスなどの首脳会談で発表され、日本の降伏の条件を示した宣言は何か
(6)(5)によって日本軍が降伏した後、日本を間接統治した連合国軍総司令部の略称をアルファベット3文字で答えよ
(7)アメリカなどの資本主義陣営とソ連を中心とする社会主義陣営の対立によって、直接戦火を交えない国際的な緊張を漢字2字で何というか
(8)(7)に関連し、日本の周辺国で発生し、自衛隊の前進となる警察予備隊が設置されるきっかけとなった戦争を何というか
(9)(7)の終結後、ヨーロッパ諸国が組織し、共通通貨『ユーロ』を導入した共同体の名称をアルファベット2字で答えよ
設問2
次の問題について選択肢の中から適切なものを選び、記号で答えなさい。
(1)現在の日本の総理大臣を次のうちから選び、記号で答えよ。
ア、阿部サダヲ イ、阿部寛 ウ、安倍晋三 エ、安倍晴明 オ、岡本信
(2)現在、日本の内閣が議論している、これまでは行使できなかった権利で、「同盟国が攻撃されたときに自衛隊が武力によって反撃できる権利」として位置づけられている権利を選び、記号で答えよ。
ア、個別的自衛権 イ、正当防衛権 ウ、集団的自衛権
(3)第一次世界大戦後に結成された「国際連盟」の説明として適切でないものを選び、記号で答えよ。
ア、スイスのジュネーブに本部が置かれた
イ、結成当初はアメリカや敗戦国は加盟しなかった
ウ、国際連合を発展させる形で組織された
エ、岩手県出身の新渡戸稲造が事務次長として活躍した
(4)『ロシア革命』について述べている文章として適切でないものを選び、記号で答えよ
ア・女性や労働者の運動に兵士が加わり、帝政を倒した
イ・レーニンを中心とした自治組織『ソビエト』が、ソビエト政府を樹立した
ウ・資本主義を提唱して、貧困からの脱却と経済発展を目指した
エ・地主の土地を農民に分配し、工場や銀行を国有化した
(5)次の「世界恐慌」に関する文章の空欄にあてはまる語句の組み合わせとして適切なものを選び、記号で答えよ。
1930年代に発生した世界恐慌で失業者が増加したアメリカでは、ルーズベルト大統領が公共事業を増やして労働の機会を与える( ① )を、イギリスやフランスでは植民地と本国の関係を強化し、他国の商品を閉め出す( ② )をそれぞれ実施した
ア、①ディールウィズ政策 ②ブロック経済
イ、①ニューディール政策 ②計画経済
ウ、①ニューディール政策 ②ブロック経済
エ、①ブロック経済 ②ニューディール政策
(6)ドイツで制定された20歳以上のすべての男女に選挙権を認めた憲法を次のうちから選び、記号で答えよ。
ア、大日本帝国憲法 イ、大西洋憲章 ウ、ワイマール憲法 エ、国連憲章
(7)「グローバル化」の説明として最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア、多国籍企業などの活動が抑制され、不況に陥る国々が増えた
イ、ツイッターやフェイスブックなど、個人でも海外の人々と交流することが出来る様になった反面、各国の文化的な繋がりは弱まっている
ウ、情報通信技術などの発展により、世界的に「ヒト・モノ・カネ・サービス」の繋がりが強まっている
(8)非核三原則の組み合わせとして適切なものを選び、記号で答えよ。
ア、核兵器を「持たず・作らず・持ち込まず」
イ、核兵器を「持たず・使わず・持ち込ませず」
ウ、核兵器を「持たず・作らず・持ち込ませず」
エ、核兵器を「持たず・作らず・使わせず」
(9)「満州事変」の説明として最も適切なものを選び、記号で答えよ。
ア、満州における権益を守るため、中国から多くの移民が満州へ移住した
イ、中国軍が満州鉄道を爆破し、満州全域を占領した
ウ、日本軍が満州鉄道を爆破し、満州全域を占領した
エ、国際連合から調査団が派遣された
(10)次の説明文の空欄にあてはまる語句の組み合わせとして適切なものを選びなさい。
1930年代に入ると軍部が政治に対する姿勢を強行化させ、当時の首相・犬養毅を暗殺する( ① )や東京中心部を占拠する( ② )が相次いで発生した
ア、① 五・一五事件 ② 五・四運動
イ、① 五・四運動 ② 三・一独立運動
ウ、① 五・一五事件 ② 二・二六事件動、
エ、① 二・二六事件 ② 三・一独立運
(11)次の空欄にあてはまる語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
1938年に( ① )が制定されたことで、戦争に必要な物資や国民が議会の議決を待たずに動員されると同時に、政党も( ② )にまとめられ、国民は( ③ )を組織して戦時体制が整えられた
ア、① 国家総動員法 ② 株仲間 ③ 隣組
イ、① 国民統制法 ② 大政翼賛会 ③ 株仲間
ウ、① 国民統制法 ② 反戦平和会 ③ 5人組
エ、① 国家総動員法 ② 大政翼賛会 ③ 隣組
設問5
次の問題文と解答上の注意点をよく読んで、あなたの考えを書きなさい。
現在、あなたの中学校の生徒会が、制服のデザインを変更しようと生徒総会で決議し、職員室の先生方と話し合いをしていると仮定します。あなたは、中学校の制服のデザインを変更することについて、下の資料を活用しながら、校長先生に自分の考えを伝える手紙を書いて下さい。
資料1
全校生徒に対するアンケートの結果
制服のデザイン変更に賛成・反対?
賛成 …70%
反対 …20%
わからない…10%
資料2
地域住民に対する調査の結果
制服のデザイン変更に賛成・反対?
賛成 …25%
反対 …65%
わからない…10%
解答上の注意点
①今回は制服のデザインを変更することに「賛成」「反対」のどちらかの立場に立つ。よって、「どのようなデザインにするか」「私服での登校を希望する」などの考えは除外するものとする。
②「賛成」か「反対」のどちらかの立場を選び、解答の中で自分の立場を明記すること。解答の形式が適切であれば、どちらの立場に立ってもかまいません。
③自分の立場を選らんだ理由を簡潔に記述すること。記述するにあたっては、文法や言葉遣いに注意すること。文章表現を基本とするため、箇条書きなどにはせず、適切な文章や表現で記述すること。ミスがあるごとに減点するので、誤字脱字などの基本的なミスは無いようにすること。
④自分の立場とは逆の立場の人から予想される反論をひとつ書き、それに対する自分の考えを記述すること
⑤解答にあたっては、問題文に対応するように注意すること。
⑥これはテスト問題であり、架空の問題を扱っています。実際の問題や事実関係とは一切関係ありません。
模範解答はこちらです。
設問1
(1) ① 三国協商 2
② 三国同盟 2
③ 日独伊三国同盟 2
(2) 二十一箇条の要求 2
(3) ファシズム 2
(4) レジスタンス 2
(5) ポツダム宣言 2
(6) GHQ 2
(7) 冷戦 2
(8) 朝鮮戦争 2
(9) EU 3
一問一答問題はただのクイズですから、何も悩むことはありません。問題は次です。
設問2
(1) ウ 2
(2) ウ 2
(3) ウ 2
(4) ウ 2
(5) ウ 2
(6) ウ 2
(7) ウ 2
(8) ウ 2
(9) ウ 2
(10) ウ 2
(11) エ 3
同じ選択肢が続くと、とても不安ですよね。しかし、これは心理作戦です。案の定、みんな騙されました。
設問5
校長先生へ
私は制服のデザインを変更することに反対です。
理由は地域住民の方の反対意見が多いからです。
賛成の立場の人は、生徒の意見では賛成する人が多いと主張するでしょう。
しかし、私は地域住民の中にいる卒業生などの人たちの考えを尊重したいです。
よって、制服のデザインを変更することには反対です。
3年B組 壇蜜
この問題は解答上の注意点をよく読んで答える必要があります。
なぜならそれがすべて採点基準になっているからです。
①賛成・反対の立場の表明が3点
②理由の記述が3点
③想定される反論が書かれていて2点
④それに対する考えが書いてあれば2点
⑤問題文に対応しているかが2点 の12点満点です。
特に、⑤の問題文への対応⇒「手紙を書きなさい」なので手紙の形式になっていないといけません。
これは「思考・判断・表現」の評価項目に基づく出題です。
詳しく説明すると長くなりますが、これはOECDという経済先進国の間で行われる「PISA」という試験の問題の改題です。岩手県は日本の学習指導要領に基づく試験をつくりますが、秋田県など全国学調の上位の都道府県ではこのような「PISA型学力」を目指しています。こうした都道府県出身のライバルと、大学入試で戦わないといけないわけですから、決して他人ごとではありませんよね。
このテスト問題は平成24年のものですからおよそ10年前のものです。
岩手県の高校入試の社会科の最終問題で、同様の記述問題が出題され始めたころより少し前です。
時代がわたしに追いついてきたといっても過言ではありませんが、こうした先進的な問題を出題する先生は極めて少数なのではないでしょうか??
今後、高校の歴史総合や中学校の社会科や国語で同様の出題が見られるようになるかもしれませんね。
いかがだったでしょうか?
問題をつくる側の視点を考えながらテスト対策を進めると、いろいろなものが見えてきます。
各教科の先生の出題のクセや先生の個性を考えて、テスト対策をすると面白いことが分かるかもしれませんね。
今日も元気に、能力無限!!