附属小4年期末テスト 要約の解説
- 2022.03.18
- ブログ
進学塾TopNoteの中野渡です。
ブログへのご訪問ありがとうございます。
さて、本日は極めてニッチな話題ですが、
岩大附属小4年の期末テストに出題された要約問題を取り上げます。
事前に練習プリントも配布され、学校としてもかなり児童の皆様に
要約の技法を身につけてほしいと願っているところだと思います。
「要約」と聞くと「単に本文の最後のところから引っ張ってくればいいのでは?」と
お考えになられる方も多いかと思います。
実際に今回の期末テストの問題もそれで結果的にそれらしい答案が書けてしまいます。
しかし要約では「本文全体の流れを変えないで文章を短くする」というのが求められます。
順を追って説明していきたいと思います。
段落の中身から文章の構造をつかむ!
段落ごとに見ていきましょう。
・第一段落「カブトガニは……しています。」
ここはカブトガニの紹介です。一般になじみのうすい動物と筆者が考え紹介しているのにすぎないので、あまり重要度の高い部分ではないです。
・第二段落「カブトガニは、……できたのでしょうか。」
最後に「なぜ、そんなにも長い間生き続けることができたのでしょうか。」と問いかけています。
次に理由が続いていることから、これがここからの文章のテーマを示していることが分かります。
・第三段落「第一の理由は、……」
ここでは第一の理由として「海底のどろの中でひっそりと生活してきたこと」が挙げられています。
・第四段落「第二の理由は、……」
ここでは第二の理由として「食べものが少なくてすむ」が挙げられています。
・第五段落「第三の理由は、……」
ここでは第三の理由として「たまごを数百こずつ分散してうむこと」が挙げられています。
・第六段落「このような……」
カブトガニがさまざまな理由で長い間生き続けることができたのにもかかわらず、少なくなったこと、その理由としてカブトガニのすみかがうばわれてきたことが示されています。
・第七段落「そこで、……」
第六段落をうけて、カブトガニを守る運動にふれながら、カブトガニを守ることがわたしたちのくらしを守ることにつながると述べて文章が終わっています。
以上をふまえると、第一段落から第五段落が「カブトガニが長い間生き続けることができた理由」を述べた部分で、第五段落と第六段落で文章が二つに分かれることが分かると思います。
本文の流れを活かして答案をつくる
以上をとりまとめるとこんな感じでしょうか。
カブトガニは、二億年の間生き続けてきた動物であり、その理由として海の底の泥の中でひっそりと生活してきたこと、食べ物がすくなくてすむということ、たまごを数百個ずつ分散してうむことが挙げられる。しかし、海がよごれ、海岸がうめたてられるなどすみかがうばわれたために今では少なくなった。そこで、カブトガニを守る運動が進められている。カブトガニを守ることが、自然を守り、わたしたちのくらしを守ることにつながる。
(200字)
かなり長くなってしまいました。これを80字以下におさめていきます。
半分以下にしなければならないので、かなり思い切って削らなければなりません。
ここで注目したいのが、文章の前半部分(第五段落まで)と後半部分(第六段落以降)の関係です。
第六段落の書き出しが「このようなとくちょう」となっております。何を指しているかというと、前半部分で述べられている「海底生活、食べ物少なくていい、分散して産卵」の三つのとくちょうになります。
これらを受けて、「このようなとくちょうをもつカブトガニも、今では、ずいぶん少なくなりました。」と述べているわけです。前半部分で、「さまざまな理由でカブトガニが長い間生き続けられたのだ」ということを説明することで、第六段落の「カブトガニが少なくなった」ことの重大さが強調され、第七段落のカブトガニを守る運動の意義が浮かび上がるという仕組みです。
前半部分なしにいきなり、「カブトガニは今ではずいぶん少なくなりました」と述べても、多くの読者は「何それ」とか「ふーん、そういう生き物もいるよね」といった反応になってしまいます。前半部分があるから第六段落が活きるわけです。
といっても、結局のところ前半部分は後半部分のいわば引き立て役になっているだけなので、理由の部分まで要約で述べる必要はなく、大幅に削れるということになります。
カブトガニは、今では少なくなった。海のよごれやうめたてですみかがへったためである。カブトガニを守ることが自然を守りわたしたちのくらしを守ることにつながる。
(77字)
文章の流れを重視すると「二億年生き続けてきたカブトガニが今では少なくなったのは…」などとしたいのですが、「『カブトガニは、』から始める」「八十字以内」という条件を考えると難しいところです。
また後半部分を書くだけでも八十字をこえるので、この中でどこが外せないかを考えます。すみかが減ったことがカブトガニ減少の理由ならば、すみかをつくってやったり、守ってあげたりすることが必要です。そのために海をきれいにしたり、うめたてで変わってしまった環境を整える、要するに「自然を守る」のは人間にとってもおいしい魚が取れるなどいいことがあります。そんなわけで、「海のよごれとうめたてですみかがへった」という部分と「カブトガニを守ることは、自然を守り、わたしたちのくらしを守ることにつながる」という部分はつながっています。
逆に、カブトガニを守る運動については、これらのカブトガニを守る理由をふまえて行動している例としてとらえられるので、けずることができると考えられます。
この問題が難しい理由
今回の採点基準では、とりあえず書いていれば20点満点で10点入れているようです。そのうえで、「すみか」「守る」を使えているか、「わたしたちのくらしを守ることにつながる」が入っているかで判断されているようです。
なんとなく「具体的なことがいっぱいかいてあるところは書かない」のような考えをもって前半部分をけずり、「すみか」「守る」を活かして書けばそれらしい答案にはなります。
しかし、最後の「わたしたちのくらしを守ることにつながる」のところに関しては、文章の最後になっていきなり出てきた感じのある文なので、答案に入れにくかったことと思います。また、字数制限もかなり厳しく、上に示した答案例のようにところどころで短くいいかえていかないとこれを書かなくても字数が埋まってしまいます。要約の練習をある程度積んできた子の中には、もしかしたら「最後の文だからといって書くとは限らないかなぁ」と考えた子も多かったのではないでしょうか。
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ちなみに
カブトガニの応援ソング「がんばれカブトガニ」が世の中にはあります。
https://youtu.be/t1JKznW_Ja0
本文に登場した岡山県笠岡市の駅では電車が来ると「がんばれカブトガニ」が流れます。
https://youtu.be/QdRKp8-4Uvw